最期の時

ロビンが息を引き取った18日、私は友人と早めのクリスマスパーティーを予定していました。
普段なら日曜は実家でロビンと過ごすのですが、友人が泊まるため行けないと伝えていました。

私は4日ほどロビンと会っておらず、2日前に母から電話でなんだか首を反らすような変な動きをする、と聞いていました。
しかし、脳の影響で体が傾いたり伸びたりすることはあったので、そこまで深く捉えてはいませんでした。

そして18日の夜、ケーキやチキンを買ってドリンクを用意して乾杯をした後、2口目の時、母から電話が来ました。
内容は病院にロビンを連れてきて待っていたが、様子がおかしいので伝えたらすぐに処置室に運ばれたということでした。

私はその時、電話越しの母の言葉と自分のいる環境があまりにも違いすぎて、上手く事態が飲み込めていませんでした。
「危ないかもしれない」という母の言葉を聞いても、「何言ってるんだろう。その危ないを何回乗り越えてきたと思っているの」とぼんやりと考えていました。

事実、ロビンは過去に主治医が「この状態から助かった子は見たことがない」と言ったところから、自力で歩くまでに回復しました。
何度も奇跡だと思うようなことがありました。

私は変に冷静になって、また動きがあれば連絡をもらうことにして食事を続けました。
心配そうに見ていた友人に説明して、明るい雰囲気を取り戻そうと思いました。

何分もしないうちに、2本目の電話は掛かってきました。
「あのね、ロビン死んじゃったの」
震える母の声を聞いても、現実味はまるでありませんでした。
今は綺麗にしてもらっているから、この後はどうするか分からないという母の言葉に、実家に向かうか病院に向かうか迷い、また連絡を待つことになりました。

電話を切り友人に告げたところ、私よりずっと驚いていました。
私は驚くこともできず、ただ目の前にある食事を無心で食べながら説明を続けました。
ごめん、この後行かなきゃいけない、戻れないかも、そんなことを言いました。

私の悲しみが広がりきる前に、ケーキも食べて、プレゼント交換もして、一通り済ませてもまだ連絡はなく、そこでふと思い出しました。

最後にロビンに会った日、ロビンを抱かなかったことを。

たまたまでした。普段は絶対に抱いて過ごし、抱いて眠ることすらあります。
けれどその日は何故かよく眠っていて、寒いしそのままにしようと、また次の時にと思いました。
「次」をなんの疑いもなく信じられるくらい、いつも通りでした。

無性に我慢できなくなり、母に連絡して病院に向かいました。まだロビンが温かいうちに抱かなければと思いました。
焦りを必死で抑えながら運転している時、やっと涙が出ました。
病院でロビンに会って、やっとちゃんと泣きました。

看護師さんに綺麗にしてもらったロビンは首にリボンを巻きプレゼントのようなフードも添えてもらっていました。
まだ、生きているのではと思うほど温かい体でした。

主治医と少し話をして実家に帰った後、少しずつ体温を失くしていくロビンを抱いていると、やっと死が現実だと分かってきました。
泣いて泣いて声がつまって息の仕方が分からなくなりました。
ただ、あの日ロビンを抱かなかったことを後悔しながら生きることは耐えられないと、それだけを思ってロビンを抱いていました。

冬であることが幸いし、ロビンを挟んで川の字になって母と眠りました。
まだ体があるから耐えられる。だけど、この体が失くなったらどうなってしまうんだろうと考えていました。